#16 サドルについての話。

Introduction

When I was young…

初めて買ったヴィンテージギターは1964年製のギブソンJ-45でした。25歳の時。自分よりも3つ年上といつも言っていた。うーん懐かしい。1992年のことです。25年前だ。今から考えるとかわいいですよね。何がって作られてから30年経ってないわけです。あの頃はヴィンテージっていうよりオールドって言ってた気がする。Charさんが70年代に60年代のムスタング使ってたのを「ほんの10年前なんだからヴィンテージもくそもねえよ」って言ってましたが、今から見るとこの時代でさえそう見えますね。

ギブソンを買ったのは理由があるんです。当時音楽やる…アコースティックでコーラスでとかいう好みを持つ人は周りにいなくて、仕方なくひとりで歌おうとしていた。が、まあ歌はへただし、ギターは最初期のヤマハAPXだし。いつもの余談ですけど、この最初期のヤマハAPXってのは気持ちは分かるがつくりはダメという代物で。当時その前のモデルのCWEというやつがすごく高くて手が出なかったのに、急にお茶の間レベルの値段になったと思って飛びついたらけっこう雑なつくりだった^^。80年代のエレアコはやっぱり高いだけの理由とつくりがあったんですね。ルックス重視だとダメという典型でした。好きな人すみません。いや、APX-50はまったく別格な作りだったですよ。谷口楽器で見せてもらった。高いのはちゃんとしてた(し、実は「音が違うんだけど…」って持って行ったらプロ用とアマチュア用は全く別物ですって言われた:笑)。それで買ったんだけど…ちなみにそのほんの数年後にAPX買った人の音聴いて愕然とするくらいAPXの音は改善向上します。まあヤマハも過渡期だったんでしょう。話を戻すと、僕は低域成分のないかさかさの声質。で、ギターも低音が鳴らない(エレアコはそもそもそういう狙い)となると、なかなか聞きづらい。それで低音が鳴るギターが必要だ!となったわけです。あくまでもボイトレとか思いつかない(笑)。

低音。

当時は「低音ならギブソン」という認識がありました。ていうか僕がそう思い込んでいた。90年代頭ってほぼみんなアコギになんて興味ない頃です。いいとこBAHOのおかげでオベーションが売れようとしてるくらい。長渕剛がJapanツアーでタカミネ弾いてタカミネがそろそろ爆売れしそうな頃かな。ドンシャリの音にプリアンプが変わって。当時僕は初めてロスに行って、あまりにもヤマハとタカミネばかり勧められるので辟易した記憶がある。「アコギ?アコギならタカミネがいいよ!オベーションは高いしね(笑)マーティン?あるけど高いよ?60年代?ないない!本気?」みたいな。…ウエストコーストの人がタカミネ好きだって今ならわかるけど、当時は知らない。サンセットのギターセンターなんてヴィンテージ/中古のアコギはほんの数本しかなかった。ヤマハとタカミネとタカミネの真似したJasmineとかいうやつばかり。通りのギターショップもほぼアコギは新しいもの以外(当時はテイラーとかだった)表に出てませんでしたね。まだアンプラグドブームが来ていない。アコギに関する資料本も全然と言っていいほど出ていない頃。日本でもほとんどアコギを取り揃えてるところはなかった。これがほんの2年くらいでがらっと変わるんですけどね。

その頃のギター雑誌はみんな低音はギブソン、そう書いていたよなあと思う。キヨシローのJ-200、古井戸のハミングバード、谷村新司のダブ、吉田拓郎のJ-45・・・本当はね、その数年前ニールヤングのFreedomというアルバム聴いて、マーティンの方が低音出るんじゃないのかと思っていた。GAROのライヴアルバム然り。でも周りにそんな低音出るマーティン持ってる人いなかったわけです。正確には、「出るかもしれないけど」そういう弾き方をする人がいなかった。あのころマーティンにピックアップっていう発想持ってる人周りにはひとりきりだった。みんな大切に弾いていて弾き倒すような使い方してる人ひとりとしていなかったんです。で、そんな中、たまたまお店に行って「低音の出るアコギって…やっぱギブソンですかね?」って言ったら「今ちょうどいいのがありますよ」って勧められて。ふらふら~っと。値段も忘れない^^33万だった。

アジャスタブルサドルのJ-45。

このJ-45は、珍しく(苦笑)誰かに憧れて買ったわけではない、自分の目と耳だけで選んだギターです。ところが、J-45というギターそのものがかなり難しいギターだった。次の週、早速よく出入りしてたお店に持っていったら、「ちょっと見せて」みたいな感じでギターマニアのA氏(今は楽器店の主)があれこれと。「ワンリング」かどうか、「アジャスタブルサドル」かどうか・・・もうなに言ってるかわからない(笑)。どうやらJ-45という楽器は年代によって仕様が細かく違い、どの年代のがよいとされているという評価があるらしいと知るわけです。へええ~って感じ。ヴィンテージは奥が深い。このあたりからコレクター的な感じに引きずり込まれたんでしょうね(笑)

ともあれ、このJ-45を気に入った理由が、非常に不思議な感じの耳に心地よい音色だったこと。当時は比較対象がモーリスとヤマハとオベーションだから「低音出るなあ」「高域も倍音出るなあ」「生音伸びるなあ」と思って。

ところが、前述のA氏によると「君のはアジャスタブルサドルだから低音が鳴らない」と言う。普通のサドルの方が低音が出るっていうわけ。「ええっ!?」って感じですけどね。比較するにもモノがないしお金もないし。どうしようもない。まあいいか、なんて使ってました。たしかに考えてみれば低音が、とか言いながら、甘い音がするなあというのが気に入った理由だった。指弾きですごいマイク乗りのいい音を出すギターだった。ピックで弾くと弾いてる方は気持ちがいいんだけど聴いてる方にはじゃかじゃか度が強いみたいで。やたらと言われる。「指で弾くといい音だねえ」…うーむ。アジャスタブルサドルのなかでも僕のはセラミックサドルというやつで、独特の音色でした。これウッドサドル(ハカランダ/ローズウッド)のバージョンもあるんです。写真が…あの頃はまだわざわざカメラで撮ってた。どっかにあるんだけど…

その「アジャスタブルサドル」。はやい話がサドルの両端をねじではさんでそのねじを上下することで簡単に弦高を「アジャスト」できるという仕様なわけです。画像検索でググってください。すぐ分かると思います。これはこれなりの良さは間違いなくあるし、僕は好きな音だったんですけど、構造的に両端の2本のねじでサドルを受けている分、ダイレクトにボディに音が伝達されず、分散する。これで音が犠牲になり、低音が出ないというわけ。逆に言うとそのおかげで独特の音色になるんですけどね。いいか悪いかはいつもの話で「好み」の問題なので何とも言えません。僕は気に入っていましたよ^^。D-45買うタイミングで友だちに売っちゃいましたけどね^^;

というわけでいつもの(汗)長い前置きですが、「サドルが音を伝達するのに重要な要素である」という話をしたいわけです。

Talkin’ about “SADDLE” again.

ムスタングのサドル。

旧サイトの時にも一度この話題はやったことあるんです。その時のテーマは「チタンサドルはどうなのか?」というのがテーマだった。ダイナミックビブラートは本家フェンダーのオリジナルをもとに、70年代以降たくさんのコピーモデルが作られて、まんまそっくりなものから、多少のモディファイが加えられているものまで多数のバリエーションが存在します。

オリジナルのサドルは基本形ですけど、これがベストなのかどうか。難しいのはムスタングをどういうギターとして使うかというところだと思うんですよね。「軽い音」「パワーのない感じ」これをどうやって改善するか。もしくは「しない」か。
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Charさんのすごいというか上手いところは、ムスタングをムスタングとして手なずけているところですよね。だからアマチュアにはなかなか真似できない。怪我しちゃう。似たようなセッティングにするとほんとにへたくそに聞こえるんです。もともとこのサイトは「機材でどこまで似せられるか/近づけるか」がテーマだったんですけど、結論は出ています。「機材が似れば似るほど、本人との差が浮き彫りになる」んです。当たり前ですけどね。普通に聴けるレベルにしようとするとおそらくご本人よりも歪みを強めに(サスティンを伸ばす取り組みを)しないとあんな感じに弾けない。あれが恐ろしいところ。方向性としては「同じ機材で同じ音を出すことにこだわる」か「自分の弾き方(に合った機材)で似た音の再現を目指す」かの違い。どっちが正解とかいう話じゃないんですけど…まあプレイヤーとしては後者が正解かな。前者は求道の世界(笑)。Char道^^;。「左手右手の修行だなあ」って思ってます^^。

話を戻すと、ムスタングのオリジナルのサドルは指板のカーブとサドルの駒の高さが微妙に合ってないんです。「Charさんの弦高は極めて低い」というのが定説ですが、弦高をギリギリまで下げると1弦6弦が詰まっちゃう。これもご本人は上手さでクリアしちゃってる。それだけ弾きこんでるってことでしょうけど、アマチュアでそこに到達するのが難しい。つまりタッチ。Charさんはどこで詰まるかってわかっててやってる(節がある)。そのムスタングのクセを知り尽くしているんですよね。「調整されたギターが当たり前」「弾きにくければ楽器屋へ」「もっと弾きやすいギター買えば」と思っている僕らの甘さと差があるのがここ(笑)。「音が詰まるならどうやったら詰まらないように弾けるか」っていうのが僕らには今欠けていますよね。そんなことないですか?僕だけかな?Charさんは指の角度、フレットによってチョーキングするかスライドで持って行くか…実に細かい使い分けをしていると思う。

アマチュアとして?は、どう取り組むか。まあまずは可能な限りの調整を。このサイトの初期のころから書いてますけど、僕は北九州のクルースラットさんで調整をしてもらったときに1弦6弦のサドルの下に「金属のプレートをはさんで底上げ」してもらいました。それはお店の方のアイディアです。これですごく弾きやすくなった。その後、ムスタングの資料本が出てくる中で「カッターの刃をはさんでる」とかいろいろなアイディアを見てきました。弦高を下げようとすると必ずこの問題に行きあたるんです。

現在、この問題をもっとも正しく改善されているのはおなじみ厚木のサウンドロフトさんだと思います。「1弦6弦用のちょっとだけサイズアップしたサドル」を開発販売されています。これによって指板とのカーブがそろって音詰まりが解消され、後は自分の腕を上げるだけ、ということに^^。興味ある方、ぜひどうぞ。

ダイナミックビブラートのサドルの問題を扱ったのは、ジャパフェンのムスタングがUSAと比べて鳴り方が違うというのがいろいろ調べ始めた発端でした。当時はジャパフェンのムスタングのサドルのサイズが今より小さくて、それぞれが離れていたために、なんかりゃーんって感じのへんな?鳴り方だった。MG65モデルが出て以来、これは改善というか統一されましたが、みんながあれこれ考えていたんですよね。ESPがCharモデルに高さが調節できるようにイモネジを仕込んだサドルを搭載したり。機能か、素材か。

その「素材」の面からアプローチしているチタンサドル。実際に使ってみてチタンサドルはオリジナルよりくっきり感が増すなと思った。オリジナルよりははっきりした感じになる。前に出てくる感じが強まるんです。で、Charモデルはこれで行こうと思って搭載しています。Charモデルはもともと個性が強いからより強さを増す感じになる^^。
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改造を考える。

で。まあCharさんのコピーって考えればオリジナルのままでいいですよね。Charさん自身がオリジナルのまま使ってるわけだから。ムスタングに何を求めるか、ということを考えた時に、そのままで使うか否かってほかにギターがあるか否か、でもあると思う。それしかなければそれが少しでもいい音した方がいいですよね。Charさんはムスラトとかストラングとか言ってたけど、ムスタングの音が太くなったらってまだ思ってるかな?

数年前から僕はギターシンセサイザーを使っています。杉山清貴さんと一緒に演奏する機会があったのが発端ですが、杉山さんの曲は鍵盤楽器が主体の曲が多いので、ギターバンドでは限界がある。ギター弾きながらシンセやらの音を加えたいと思って導入したんだけど、これまでGKピックアップを取り付けるのが楽(Tune-O-Maticブリッジの下にマウントベースを挟むだけ)だという理由でレスポールで使っていました。が。どうしてもフェンダーのギターで使いたいなあと。フェンダーのギターの形が好きなんです。これが今回のあれこれにつながっていくことになるんです。

ギターシンセはもう何でもできちゃう。アームを使わなくてもベンドもできちゃう。アコギもシタールもマシンガン(笑)も何でもできます。ストラトもテレキャスターも335も出せる。ならムスタングでその音がしたらみんな驚くじゃないか(笑)。で、ギターシンセを搭載するにあたり、思い出したのがムスタングのTune-O-Maticへの改造。90年代のグランジブームの時に、カートコベインを筆頭にムスタングやらジャガーを改造しちゃうのが流行りましたよね。その時の改造の主なものは「リアをハムバッカーに」「ブリッジをTune-O-Maticに」というものだったと思います。アームなんて使わない前提。これを最初考えたんです。そうすればスタッドにマウントベースをはさめて簡単なんじゃないか…これベースでネット上を探していた。でもどうやらこれは素人がやるのはムリそうで。プロに頼まないと…つまりは一度やると後戻り出来ない改造になる。試したいだけですからこれはリスクが大きいと考えて断念。

発見!POPTUNE PTB500RP/C。

ところが、「ポン付けできるブリッジ」を発見。これが今回の目玉です。ネット上を探していて大阪の「ポップギターズ」さんのサイトに行きあたりました。もともとジャガーやジャズマスターの弦落ちの改善を意図されての開発だったようですが、大改造は…とためらう人のための、とまさに僕が思っているのと同じ展開^^。もちろんムスタングにも…というわけで。速攻購入。
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これが今回僕が買った「POPTUNE PTB500RP/C」というブリッジサドルです。お店のサイトによればロッキングローラーブリッジのカスタマイズ版ということですが…サイト上にはファニチャーやムスタングに搭載されていらっしゃる方のレポートも掲載されていますのでぜひご覧ください。

僕の本来の主旨はブリッジの下にマウントベースをはさむことでしたが、これはムリでした。そもそもの主旨が違うからというのと、フェンダーとギブソンのボディに対するネックのジョイントの角度が違うせいです。個体によってはこのブリッジを搭載すると弦高が上がっちゃうのでネックをいったんはずし、シムをはさんでというような調整が必要なものもあるようです。60年代と70年代、ジャパフェンとUSAでもそれぞれネックポケットのつくりは違いますからね。なんとそのためのシムまで付属しています^^。

取り付けもきわめて簡単。丁寧な写真付きのマニュアル、調整用のレンチが2本、そしてネック調整用のシムも同梱されています。僕は幸いにもそのままで何の問題もなく使えています。スタッドには細い芯?が入っていて、要はオリジナルの本来のブリッジの支点となっているあのねじの部分として高さを微調整できる構造になっています。調整はオリジナルと同じようにレンチで行います。70年代の個体(74年)はこれで微調整しましたが、60年代(67年)のはそのままポン付けで浮かせてないのにジャストな弦高という素晴らしさ。もちろん個体差はそれぞれあるでしょうから、モノによって調整は必要だと思います。

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ここでイントロのギブソンの話に戻るんです。アジャスタブルブリッジとムスタングのブリッジは同じ発想なんですよね。2点支持でサドルは浮いている。「音の軽さ」―それが魅力にもなっているわけですけど―の原因はブリッジの構造によって音がスポイルされていること。浮いている部分、そしてねじが動くということ。その部分で犠牲にしていく音がある。今回そのことが非常によくわかりました。このブリッジは重量も若干重い手ごたえでそれも音に影響しているでしょうが、ボディに、そしてスタッドとユニットをがっちり固定することができるために全く違う音になります。具体的に言うと音が締まって全体が鳴る感じが強まる。ギブソンのギターを弾いているみたいです。

今回、それを映像で撮ってみました。オリジナル、チタンサドル、そしてこのPOPTUNE PTB500RP/C。使ったギターは67年製ムスタングです。弦はSITのパワーグルーヴ09~42。その場で弾いてその場で同じ弦のままはずし付け替えで弾いています。オリジナルからチタン、チタンからPOPTUNE PTB500RP/C。アンプのボリュームは変えていないんだけど違って聞こえませんか?ちょっとうっかりしててオリジナルのやつやる時コーラス切るの忘れてた。すみません。でもまあオリジナルだから^^;あの曲のイントロで試してみました。

アームのチューニングに関しては、別の技術が必要です。もともとサドル云々というよりはばねのテンションの調整の方がメインだし、アームを触る技術も必要です。これに替えたからチューニングが狂わなくなるかというのはよくわかりません。僕のは狂わないように調整してるので。もちろんアーム使っても狂わないです。一方で、Charさんっぽい音かどうか、という前提で話をすれば音はまったく違います(笑)。そもそもそういう狙いで商品ができていない(と思います)^^。Charファンだけど、ムスタングの音がいまいち気に入らないとか音がぺんぺんで使いあぐねているとかいう人にはおススメします。劇的に歪みの量を増やさなくて済むようになるからです。クリーンに近い感じで弾く勇気が出ます(笑)。ギターとしてのポテンシャルは格段に上がる気がします。Charさん風に言うと、ムスタングがムスラト…というかムスポールかな(笑)になります。太さが感じられるので本当に変わった気がしますよ。ムスタングが2番手以降にお蔵入りしてるあなた、いかがですか?件のギターシンセのピックアップをつけたムスタングはこないだJCの回で弾いていましたが、違和感なかったでしょ?まあどれがいいかはあくまでその人の好みだと思います。聞こえ方には個人差がありますから。僕はどれも素敵だと思っています。ギターを変えずにサドルを変えるだけでいろんなパターンが楽しめるというひとつの例でした^^。
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Special Thanks to RIZ-LABEL studio 賀来(Facebook)

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